ファシリテーションの「あるある」
職場の会議や地域等の会合で、こんな問題ありませんか?
😭 意見が出ない…
😭 「偉い人」等特定の人だけが話す…
😭 話の長い人がいる…
😭 話が脱線する…
😭 時間が長い割に結論が決まらない…
多様な人が集まって意見を交わし、一つの結論を出すというのは難しいことですよね。
会議の進行(ファシリテーション)を任されている方は特にお悩みではないでしょうか?
ファシリテーションは難しい…
ファシリテーションの難しさについて、多くの口コミがありますので、ご紹介します。
このように多くの方が「ファシリテーション難しい…」と悩んでいます。
どうすれば上手く行くのでしょうか?
ありがちなNGファシリテーション
まず、多くの方がやってしまいがちな「NGな進行」に気をつけ、やめていきましょう。例えば、以下のようなことがありますね。
❌固い雰囲気
…表情、言葉遣い、声のトーン等、固い雰囲気のまま進行してしまう。ファシリテーターが良くも悪くも雰囲気をつくります。
❌いきなり「何か意見ありませんか?」
…ろくに説明も情報提供もなく、いきなり意見を求める。これでは参加者は困ってしまいます。「レベル合わせ」が必要です。
❌待てない
…振ったはいいが、沈黙が怖くて自分が話し出す、話し続ける。
❌恣意的に指名する
…「じゃ、○○さん」と、自分だけの判断で指名する。参加者にとって公平性も自主性も奪われてしまいます。必要な場合もありますが、なるべく避けたいです。
❌無反応
…参加者の意見に無表情、無反応で、うなづきもせず、「いいですね」等も言わない。参加者は励まされません。
❌否定・評価する
…「あ、それ、難しいですよね…」等、ファシリテーターが参加者の意見を否定、評価する。もう意見は言えなくなります。(結論を急いではいけません)
❌話を取る
…参加者が何か言うたび、「あ〜、確かに○○は…私も…」等と自分の体験や知ってることを話し出す。
❌誘導
…ファシリテーターが用意した意見の承認を求めたり、持っていきたい結論に誘導する。
身に覚えはありませんでしょうか?
こうした行為は、初めは誰もがやってしまいがちです。
いいファシリテーションをするには、まずは、こうしたことを自覚して、「やめる」ことからです。そして、逆のことをしていけば、自ずといいファシリテーションができます。
ファシリテーション 基本の姿勢
スキルは後段で詳しくお伝えしますが、まずは、「これだけは押さえておきたい」という基本から。シンプルに、「NG」の逆です。
⭕️⒈ 明るく前向きな態度をとる
話しやすい雰囲気づくりは重要です。それには、ファシリテーターの表情や声等の「ボディランゲージ」の影響も大きいです。いつもより笑顔で、やや大きめの声で臨みましょう。
⭕️⒉ 丁寧に説明する
意見を求める前に、会議で何が決まるといいのか?なぜ、それが必要か?背景やこれまでの経緯は?参考になる情報は?前提条件(予算や期限等)は?何時までか?等、丁寧に説明しましょう。そうすることで、参加者は考えやすくなります。
⭕️⒊ 発言は公平に求める
ファシリテーターがランダムに指名することは避け、自由に発言してもらうか、何かのルールに則って順番を決めましょう。順番の決め方としては、①座席の順(時計回り等)、②名前のあいうえお順、③経験年数の短い順 等があります。そして、人の意見に対して、ファシリテーターが反応して話すのではなく、「他の方はいかがですか?どう思いますか?」等と、参加者に振りましょう。
⭕️⒋ 待つ
ファシリテーターの、実は、重要なスキルが「待つ」です。沈黙を恐れてしまうことが多いですが、参加者には考える時間や言い出すまでに心の準備が整う時間も必要です。「必要な沈黙」もあると理解して、よく参加者の様子を観察して待ちましょう。
⭕️⒌ 肯定的な反応を返す
アイコンタクト、うなづき、あいづち。この3つの反応を心がけましょう。あいづちは、「なるほど!」「いいですね!」「ありがとうございます!」等、意見の内容の良し悪しを評価するのではなく、発言してくれたこと自体を讃え、「受け止めましたよ」という気持ちを表しましょう。
そもそものファシリテーション
ファシリテーションとは? 意味を解説

ファシリテーションとは、一言で言えば、みんなの考えを「引き出し、まとめる」コミュニケーションスキルです。
ファシリテーションが活用される場には、大きく二つあります。
一つは、「話し合いの場」です。
企業をはじめとする無数の職場や地域住民の集まり等、世の中のあらゆる場面で行われる「会議」です。
こちらのファシリテーションの目的は、集団の意思決定・合意形成です。
もう一つは、「学びの場」です。
学校の授業、各種講座・研修等のいわゆる「教育」の場です。
こちらでの目的は、「主体的な学習」の支援です。
教師や講師が一方的に知識を与えて相手を受身にしてしまうのではなく、参加者が自ら課題を見つけ、考え、学び合い、取り組み、行動に移せるよう促進することです。
どちらにも共通するのは「当事者主体」という考え方です。
参加者を受身にさせず、「主役」にして、全員の意欲と力が自然と発揮されるように場の舵取りを行うということです。
このページでは、主に会議の方を対象にしてお話ししますが、基本的なことは両方に通じると思って読んでいただければ結構です。
さて、会議やミーティングの「ゴール」とは何でしょうか?
それは、「参加者全員が納得する意思決定」です。
全員が話し合いの「プロセス」に満足し、「結論」に合意できている状態です。
そのためには、全員が同じ方向を向き、発言の機会が公平に与えられ、異なる意見が整理され、合意に導かれるという「スムーズなプロセス」が必要です。
そうしたプロセスを、「調整役」なしに参加者だけで行うことは通常難しいですね。
人数が多いほど、議題が複雑で難しくなるほど、
全参加者をサポートする「調整役」が必要になります。
その「調整」や「促進」の働きが「ファシリテーション」であり、
ファシリテーションをする人が「ファシリテーター」と呼ばれます。
職場も地域でも多様な人々が集まり、価値観が多様化する今、「ダイバーシティ(多様性)」が重視されています。そんな中で、多様な意見を引き出して上手にまとめるファシリテーターが、最近益々求められています。
ファシリテーション 言葉の定義
詳しい定義には様々あるのですが、代表的なものをご紹介します。
まず、用語集では次の通りです。
企業や学校、地域のコミュニティなどの組織の会議などでグループ活動が円滑に行われるように、中立的な立場から支援を行うこと。またはそのための手法や技術のこと。
(人材マネジメント用語集)
また、日本でいち早くファシリテーションの普及を始めた「日本ファシリテーション協会」では、ファシリテーションを広く捉えて、次のように定義しています。
人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。
(日本ファシリテーション協会)
集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を
支援し促進していく働きを意味します。
そして、日本で初めてファシリテーションを紹介した本と言われる『ファシリテーター型リーダーの時代』の中にある定義です。
中立的な立場で、
(『ファシリテーター型リーダーの時代』)
チームのプロセスを管理し、
チームワークを引き出し、
そのチームの成果が最大となるように支援する。
この本は主に企業や組織の会議について言及しているので「チーム」とありますが、それを「集団」と置き換えるとどんな活動にも当てはまり、私には、これが一番シンプルに本質を捉えた定義に思えます。
いかがでしょう?何となく、イメージがつかめましたでしょうか?
即ち、ファシリテーションとは、
狭義には「会議や話し合いの促進」、または「主体的な学習の促進」でありますが、
広義には「あらゆる集団活動の促進」と言えます。
<マメ知識>
元々の意味は「やりやすくする」こと。
ファシリテーションの語源は、英語の動詞「facilitate」。
その意味は「物事をやりやすくする。容易にする。円滑にする。促進する」です。
つまり、特別難しい言葉ではなく、何が対象であれ「やりやすくする」ということ。
会議のファシリテーションであれば、「話しやすくする」ことと理解しておけばいいでしょう。
ファシリテーターとは?
ファシリテーターと司会者の違い
<司会とファシリテーターの違い>

司会者とファシリテーターの違いは、何を持って会議が成功したと考えるかの違いと言えます。
司会者にとっての成功は議事次第通りに会議を進め、滞りなく終了すること。
ですので、意見が出るかどうかや、全員の納得で合意に至れるかは二の次です。
それに対して、ファシリテーターにとっての成功は「全員の意見を引き出して結論の質を高め、合意に導くこと」。
そのために、様々な方法で参加者の本心を引き出し、意見を整理し、議論がずれていたら戻し、参加者間の対立の仲介をする等、幅広い関わり方で積極的に参加者に働きかけます。
司会者よりもさらに高い能力とスキルを求められるのがファシリテーターであり、そこが司会者の決定的な違いです。
司会の仕事も決して簡単ではありませんが、司会以上にさまざまな役割を与えられているのが ファシリテーターの特徴です。
ファシリテーターの役割・位置付け

ファシリテーターの役割を一言で言うと、会議等の「調整役」であり、「促進役」です。
別の言い方では、「潤滑油」「交通整理役」「縁の下の力持ち」等と言えるでしょう。
ファシリテーターの原則的な立場として、以下のことが言えます。
⚫︎自分の意見を言わない。
⚫︎参加者の意見を聴くことに徹する。
⚫︎全ての人・意見を公平に扱う。
そのために、事前の準備段階から、会議の目的を明確にし、議題を決定・周知し、適切な参加者を集め、議論の流れを決め、時間を管理するといった「段取り」を行います。
また、参加者が話しやすいように肯定的で安心できる雰囲気をつくることや、参加者の言いたいことを補足するのも、ファシリテーターの重要な仕事です。
つまり、ファシリテーターの役割をまとめると、以下のような特徴があります。

ファシリテーターが持っておきたい「心構え」
会議のファシリテーターが場に臨む際に、こんな心構え・意識を持っているといいですよ、ということをご紹介します。(ファシリテーターによって重視する点は違うと思いますが、あくまで私のオススメです)
「知ろうとする」こと。進行を任されると、ついつい上手に進めなきゃ、仕切らなきゃと思いがちですが、大事なのはみんなの意見を引き出すことです。そのためには、ファシリテーターに「知りたい」という気持ちがあることが大切です。「みんな、何を思ってるんだろう?何を求めているんだろう?」という素直な関心を持ちましょう。
工事現場みたいですが(笑)、「心理的安全性」のことです。意見を言っても大丈夫、何を言って否定されないという雰囲気、信頼関係が会議には何より大事です。「どんな意見も歓迎です」と言ったり、ルールをつくったり、笑顔や冗談でとにかく「安全第一」を心がけましょう。
問題解決の話し合いであっても、「何がいけなかったんだ?」(過去の追及)よりは、「どうなるといいか?そのために、どうしたらいいか?」(願望の実現)という未来に目を向けた話し合いをした方が参加者のモチベーションは高まります。ファシリテーター自身がその意識を持ち、みんなの目を未来に向けさせましょう。
ファシリテーターは中立で公平であることが求められますが、その具体的な行動の一つです。立場の上下を会議の場に持ち込まない、誰が言った意見かを問題にしない、アイディアを出した人を即責任者にしたりしない。そのために、板書の際には意見だけを書いて名前は書かない等の配慮をしましょう。
長い話や脱線等、困ったことが起きた時、参加者の立場では指摘しにくいものです。ファシリテーターには事実上権限が与えられています。時に勇気を持って介入し、進行することが「みんなのため」になります。相手の気持ちへの配慮は必要ですが、遠慮のしすぎもいけません。「自分に与えられた権限を行使するのはみんなのために必要なことだ」という意識を持ちましょう。
ファシリテーションのスキル
ここからは、ファシリテーションスキルについて、解説していきます。
座席配置のコツ〜話しやすい環境づくりから
ファシリテーションは基本的にはコミュニケーションスキルなのですが、物理的な環境づくりも大事な技です。その大きな要素が「座席配置」です。話しやすさや一体感を高めるための様々な座席配置をご紹介します。

ロの字型
まずは、お馴染みのロの字型。カタカナの「ロ」の形ですね。企業はじめ組織では大体これではないでしょうか。メリットとしては、テーブルを組みやすく、みんなの顔を見て話せる。デメリットとしては、人数が増えるほど距離が遠くなり、緊張感が高まる、という点があります。

コの字型
続いて、コの字型。ロの字型の一面を開けて、ホワイトボードやスクリーンを背にファシリテーターが立つ形です。メリットとしては、参加者が板書を見ながら集中して話しやすい。デメリットとしては、ロの字型に比べて座席数が減るという点があります。(ファシリテーター的には、ロの字よりはこちらを勧めます)

対面型
対面型は、テーブルを全てくっつける方式です。メリットとしては、参加者の物理的・心理的距離が縮まり、話しやすくなること。デメリットとしては、ロの字型に比べて一部スペースが狭くなるという点があります。(ファシリテーター的には、ロの字よりはこちらを勧めます)

半円型(馬蹄型)
半円型は、机をとっぱらい、ホワイトボードかスクリーンや壁の周りに椅子だけ持って集まってもらう方法です。メリットは、距離感がぐっと縮まり、一つの方向に向かって話す雰囲気が高まること。デメリットは、書類が置けず、メモは取りにくいことです。その点は、必要に応じてクリップボードを用意することで補えます。

円座
円座は、文字通り、座席だけで丸く座る形です。メリットとしては、参加者の物理的・心理的距離が縮まり、一体感が高まること。デメリットとしては、逆に、場合によっては緊張感が高まることと、記録が取りにくいことと。チームビルディングや夢を語るなど、何か本音で語り合う場合に向いていると言えます。
これだけは押さえておきたい7つのコツ
ファシリテーターに求められる仕事はたくさんありますが、ここさえ押さえておけば何とかなる!という基本の7つのコツをご紹介します。
ファシリテーション 7つのコツ
① ゴールを決める
② 時間を決めて守る
③ 安心と意欲を引き出す
④ 一巡で発言を求める
⑤ 意見を掘り下げる
⑥ 意見を書く
⑦ 選択肢を上げ、みんなで選ぶ
① ゴールを決める
「この会議で決めたいことは○○です」等と、最初に明確に伝えて、「会議のゴール」を共有しましょう。ゴールというのは、「会議が終わった時にどうなっていればいいか」という条件のことです。
例えば、「部署のコスト削減策を最低1つ決める」等。
単なる報告・連絡ではなく、アイディアを出しあって決めたい事があるのかどうか、あるのであれば、それをはっきりさせておくことです。
或いは、最終決定でなくても、「今日はアイディア出しまで」と、プロセス全体の中でのその日のゴールを明確にしておくことです。
ありがちなのが、定例会議で報告・連絡がルーティンとしてあり、そのままダラダラと討議なのかどうか曖昧なまま話が進むというようなケース。
会議の目的・目標が明確になっていないことが、会議が上手くいかない大きな原因です。
そして、できれば、その目標を考えてもらうのに必要な情報を共有すること。
関連するデータやこれまでの経緯・背景、なぜそれを決める必要があるのかの理由等です。
そうした情報共有で現状認識を一致させ、やっと「同じスタートラインに立つ」ことができます。
それがなければ、参加者にとってはよくわからないまま話が進むことになってしまいます。
② 時間を決めて守る
「終了時刻は○時○分です(会議は○時○分までです)」と、
必ず会議の終了時刻を決め、それを最初に伝えましょう。
ダラダラした会議にありがちなのが、終了時刻を決めていないことです。
「いや、議題がたくさんあって話が複雑だから、どれぐらい時間がかかるかわからないので決められなません」と言う人もいるかもしれませんが、それは、そもそも計画に無理があったり、見通しが甘いということです。
どんな仕事にも締め切り・納期があり、それまでに間に合わせる必要がありますよね?
会議も同じです。
「会議のコスト」を考えたことがあるでしょうか?
会議室の使用料や電気代や資料の印刷費といった経費もありますが、それ以上に大きいのが、もちろん、人件費です。
会議のコスト=人件費/時間 × 人数 × 時間
目には見えにくいですが、実は、大きなコストがかかっていることがお分かりいただけるでしょう。
ダラダラやっていいはずがありません。
ファシリテーターを筆頭に、参加者全員に時間意識=コスト意識をもってもらうこと。
そのために、冒頭で終了時刻を伝えること。
また、途中でも、「時間が限られてますので手短にお願いできますか」「あと20分ですね。どうしましょうか?」等と、時間を意識してもらう発言をするのが有効です。
さらに、大きな時計をみんなの目に入るところに設置したり、カウントダウンタイマーをテーブルの上に置くという工夫も効果を発揮します。
③ 安心感と意欲を引き出す
「どんな意見でも歓迎です。的外れでも、まとまってなくても結構です。」
「意見は貢献です。みんなで実りある会議にしましょう」
等と冒頭や途中で伝え、参加者を安心させつつ、参加意欲を高めましょう。
ただでさえ緊張感が上がりがちな会議。
もちろん真剣な場ですから、ある程度の緊張感は仕方ないのですが、「話しにくい」と参加者が感じてしまうと、会議の目的には障害になります。
自分も発言していい。
何を言っても怒られない、馬鹿にされない。
ちゃんと聞いてもらえる。
参加者がそう感じられる「心理的安全性」の高い場をつくることが会議にはとても大切です。
それには、上記のように「自由な発言を歓迎する」というファシリテーターのメッセージが不可欠です。
また、それを伝える時に、言葉だけではなく、言葉以上に、表情や声のトーンといった非言語表現が大事です。
ファシリテーターが「本気でそう思っている」ことが伝わるよう、笑顔で安心させつつ、熱意のこもった明るい声で積極的な雰囲気をつくっていきましょう。
また、メッセージ以外にも「会議のルール(約束事)」を設定することも、安心感と意欲を引き出すのに有効です。
例えば、こんなルールです。
会議のルール(例)
⒈ 会議中は会議に集中しよう
⒉ 発言は1回1分以内で簡潔に話そう
⒊ 人の意見は否定せず、遮らずに聴こう
④ 一巡で発言を求める
「では、まずは、こちらから一人ずつ順番に意見を言っていただけますか?」と、
少なくとも最初は全参加者に、一巡で発言を求めることをしましょう。
ありがちなのは、「では、どなたかご意見ありませんか?」と、全体に向けて振ってしまうこと。
もちろん、これで意見が出るような雰囲気や関係性ならいいのですが、そうでないことが日本社会の場合はほとんどかと思います。
会議も仕事であり、誰もが発言を通して貢献することが求められています。
その意欲を引き出す意味でも、一度は一人ずつ意見を出すことを求めましょう。
⑤ 意見を掘り下げる
「具体的に言うと、どういうことでしょうか?」
「その意見の理由はどんなところにありますか?」と、意見を掘り下げましょう。
一つの意見の背景にある状況や発言者の体験、もしくは主張の根拠が具体的にわかるよう、質問して掘り下げ、「真意」を明らかにすることです。
それがわからなければ、「賛成」か「反対」か、「A案」か「B案」かという表面的な主張のやり取りに終始し、解決策を合意することが困難になります。
真意、つまり、本当の問題や満たしたい要求がわかれば、解決策を考えやすくなります。
しかし、一般的に、誰しも最初から考えを明確にできていて、まとまった話ができるわけではありません。
ですので、ファシリテーターが補助し、掘り下げるお手伝いをしてあげることが、議論を促進する大事な仕事になります。
⑥ 意見を書く
出てきた意見を可視化(目に見えるようにする)しましょう。
ホワイトボードへの板書、パソコン+プロジェクターでの投影、付箋に書いて(もらって)壁に貼る。それぞれ一長一短ありますが、方法はやりやすいものを取ればいいと思います。
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また、ファシリテーターが一人でやらなくても、誰か他の人に書いてもらっても全く構いません。
「可視化」していなければ、議論が拡散したり、同じ話が繰り返されたり、何をどこまで話したかがわからなくなることがよくあります。
「可視化」はそうした混乱を防いでくれて、議論をスムーズにしてくれます。
「うまい下手」が最初は気になるかもしれませんが、箇条書きで結構です。
要点や、キーワードを拾って書くだけでも役に立ちます。
書いておけば、「もうこれでいいですか?では、どの意見がいいと思いますか?」と、選択→収束に向かわせることが容易になります。
⑦ 選択肢を上げ、みんなで選ぶ
会議の最後の段階になりますが、出た解決策やアイディアを選択肢として並べ、みんなで選ぶようにしましょう。
ポイントは「みんなで」です。
ファシリテーターや「偉い人」だけで決めるのではなく、全参加者の声を聞くということです。
最終的な決定権はそのグループのリーダーにあってもいいのですが、一旦は全員の意向を聞いてみること。それが会議の納得感を高めます。
例えば、「手上げ投票」。
「どの解決策に賛成ですか?」と、A案、B案、C案の中で最も賛同するものに手を上げてもらう。そして、○や☆印をつけていく。
この単純な方法で、参加者の意向がわかります。
もし、意見が大きく分かれたら、そこからまた、「その案への賛成の理由」を尋ねることで、それぞれが、何を大事に考えているかという「ニーズ」を明確にすることができます。
そうすると、それぞれのニーズを同時に満たす「折衷案」を、そこからみんなで考えていくこともできます。
ここが会議で一番難しいパートで、方法も色々ありますが、方向性として、「選択肢を上げ、みんなで選ぶ」ことを頭に入れておいていただけるとよいでしょう。
以上、この7つのコツを忘れずに進行すれば比較的スムーズに会議を進行できます。
ファシリテーションのスキル(技術)とは?
「コツ」で大まかにやるべきことがわかった上で、さらに求められるのが、話し合いを促進するためのコミュニケーションの「スキル」です。
ファシリテーションに必要なスキルは実に多岐に渡り、ファシリテーションとは、言わば「コミュニケーションの総合技術」と言えます。
代表的なスキルには、以下のようなものがあります。
ファシリテーターのスキル
①観察力 … 参加者の意欲はどの程度か、話しやすそうか、指示や意見が理解できているか。
等、参加者の様子をよく観て、状態を把握する力。
これが全てのアクションの判断根拠になるので、実は重要です。
②説明力 … 会議の目的・目標や背景、進め方等をわかりやすく簡潔に伝える力。
単に話すだけではなく、参加者が共感し、やる気になる説得力が求められます。
③傾聴力 … 参加者の発言や感情を、内容に関わらず受け止めて聴く力、姿勢。
参加者にとって「しっかり聴いてもらえている」と感じられることがポイント。
👉《ファシリテーターの口グセ》
「なるほど!」「いいですね!」「ありがとうございます!」と発言に肯定的な
反応を示し、参加者を勇気づけましょう。
④理解力 … 意見のポイント、複数の意見の相違点や関係、抽象度の違い等、意見の内容を
論理的に理解する力。最も必要となる力です。
⑤要約力 … 「○○ということですか?」と長い意見を要約したり、言葉を足して補助したり、
否定的な表現を肯定的に言い換えたりする表現力。
⑥質問力 … 「具体的には?」「その理由は?」等の掘り下げる質問や、「賛成か反対か?」等
の限定質問(クローズドクエスチョン)、「どう思いますか?」等の拡大質問(オ
ープンクエスチョン)等、参加者の思考を刺激し、答えやすくする問いかけ。理解
力と並んで重要なスキルで、何通りもの質問があります。
⑦介入力 … 沈黙・演説・脱線・否定等の「困った」状況において、適切なタイミングで適切な
言葉をかけて流れをスムーズにする力。
こんな時どうする? ファシリテーターの上手な介入の言葉

ファシリテーターのスキル⑦の介入力。
これが、実際の現場では必要とされ、進行役にとっては頭を悩ませることではないでしょうか。
話の長い人、脱線する人、否定的なことを言う人…
円滑な進行のためには、時には「捌く」ことも必要です。
ただし、人を不愉快にさせたくもないですね。
そんな時には、このような言葉を使ってみて下さい。
沈黙 意見が出てこない…

・難しいですか?どこかわからないところありますか?
・まとまってなくていいですよ。思いつきでも、つぶやきでもいいですので。
・例えば、○○という意見もありますが、どう思いますか?
・(少し笑いながら)なんかシーンとしちゃいましたね。みなさん、ご飯は食べてきましたか?(等ユーモア交えて)
演説 話が長すぎる…

・(時計や進行表をチラチラ見る)
・すみませんが、時間が限られていますので、そろそろまとめていただけますか?
・(話を引き取って)なるほど、○○ということですね。ありがとうございます。他の方はいかがでしょうか?
脱線 話がずれている…

・それは、△△のことですね。○○(本題)についてはいかがでしょうか?
・確かに、その点も大事ですので、それについてはまた別の機会にしっかり話せればと思います。
・あれ、どこまで話しましたっけ?
否定 人の話を否定・攻撃する…

・意見の評価は後でしますので、まずは言いっぱなしで出し合いましょう
・(否定した人に)○○さんは、どうしたらいいとお考えですか?
・リフレーミングする(強い言葉、否定的な言葉をソフトな言葉、肯定的な言葉に言い換える)
例)「どこにそんな金があるんだ!」
👉「予算的には難しいんじゃないかと?」
👉「予算があればいいということですか?」
いかがでしょう?
人が話している時に、特にそれが上位者だと、介入することには勇気がいると思います。
「自分はできないなぁ」と思った方もいるかもしれません。
大事なことは、どんな言葉を使うか以上に、どんな態度で言うか、です。
強い言い方、厳しい言い方ではなく、笑顔で優しく伝えること。
そうすれば、相手も受け止めやすくなります。たいていの場合は大丈夫です。
私の経験では、こちらが恐れるほど、人は反発したり怒ったりはしません。
「演説」「脱線」「否定」等の行動をしてしまう人は自分では気づいていないでしょうし、
自分では自分を止められなくなっているのです。
ですので、介入することは、自分の行動に気づいてもらうためでもあり、
その人のためにも「止めてあげる」ぐらいの「親切心」からの行動と考えましょう。
その人も傷つけず、みんなにとって時間を無駄にせず有意義な場にする。
そういう気持ちがあれば、介入も恐れなくできるようになります。
むしろ、何も介入しないで、全員の時間を無駄にすることの方を恐れてほしいと思います。
参加者の立場では、介入することは困難です。
ファシリテーターにはその権限が与えられています。
みんなのために、その権限を上手に使って下さい。
ファシリテーションスキルの分類
「このように、「論理」と「心理」を同時に扱いながら、その都度全体にとって最適なコミュニケーションを取っていくのがファシリテーションのスキルです。
これらのスキルを会議の流れに沿って分類すると次にようになります。
(日本ファシリテーション協会が提唱している分類に則っています)
スキルのカテゴリー | タイミング | 目的 | スキル・タスク |
⒈「場のデザイン」のスキル | 準備から会議冒頭の「共有」の段階 | 話し合いの 土台づくり | <事前> ⚫︎テーマ・議題の選定 ⚫︎参加者の選定 ⚫︎時間・場所等の選定 ⚫︎進行プロセスの決定 <当日> ⚫︎会議の目的・目標を伝える ⚫︎終了時間を伝える ⚫︎経緯・背景等を伝える ⚫︎ルール(マナー、約束事)を伝える ⚫︎発言を歓迎し、協力を呼びかける ⚫︎表情や声の大きさ・トーンで雰囲気をつくる |
⒉ 「対人関係」のスキル | 意見を出す 「発散」の段階 | ⚫︎発言の促進 ⚫︎真意の確認 ⚫︎雰囲気の把握 ⚫︎秩序の管理 | ⚫︎順序の指定/付箋・用紙の使用/ペア化等の人数調整 ⚫︎質問(確認、具体化、理由) ⚫︎観察 ⚫︎介入(長話、脱線、対立等に) |
⒊ 「構造化」のスキル | 意見を整理する 「収束」の段階 | 意見の整理、 理解・判断の支援 | ⚫︎意見を可視化する(ホワイトボード等に板書/付箋を壁に貼る/パソコンとプロジェクターで投影する等) ⚫︎合意点・相違点を確認し、相違点の理由を掘り下げる ⚫︎各種フレームを使って整理する |
⒋ 「合意形成」のスキル | 意見を選択する 「決定」の段階 | 比較検討 意向の確認 | ⚫︎判断基準の明確化、優先事項の確認、選択肢の選定 ⚫︎決定事項、保留・継続討議事項の確認 ⚫︎具体的行動、担当者、着手時期・期限等の確認 |
ファシリテーション/ファシリテーターを導入するメリット
社内の人材であれ、社外のプロを招くのであれ、ファシリテーターとなる担当者を決めて会議を進行してもらうことには多くのメリット・効果があります。
メリット①:納得できる合意形成の実現
ファシリテーターは、会議の中で中立的な立場で参加者の意見を聞きます。そのため、一人ひとりから意見が出やすくなると同時に、それぞれの意見の論点の違いや主張のポイントを客観的に聞き分け、整理することができます。自分の意見を持たず熱くならない人が一人いることで、全員の意見をまとめ、合意形成を図ることが容易になります。
もしもファシリテーションを導入せずファシリテーターがいなかったら、一般的には管理職や経営者が司会を務めます。が、上司に面と向かって堂々と意見を述べられる部下はなかなかいません。上司はつい話しすぎるという傾向もあり、参加者の意見や本音は一切引き出されません。結局、上司が用意した意見を言い、それを承認して終わりという会議もよくあります。それも決定ではありますが、みんなの納得感がありません。知恵もやる気も引き出されず、会議の正しい姿とは言えません。
ファシリテーションを導入することで、誰もが納得できる合意を形成できます。
メリット②:会議の効率化と労働力の負担軽減
会議の問題でよくあるのが「時間がかかりすぎ」ということです。
会議がダラダラと長引けば、それだけ参加者に負担を強いることになると同時に、人件費の無駄遣いにもなります。
時間超過の原因は、単純に「誰も時間を管理していない」ことに始まり、「一人の話が長すぎる」「同じ話が繰り返される」「関係ない話をする」「一度決めた前提が覆される」等の「マナー違反」が起きるからです。そうした行為を一参加者の立場で指摘するのは困難ですが、権限を与えられたファシリテーターならば止めて促すことができ、効率的な進行が可能になります。「タイムキーパー」は違う人が担当してもいいのですが、いずれにしても、ファシリテーターがいることで、会議を効率化しやすくなります。
メリット③:革新的なアイデア創出の促進
ファシリテーターの場と上司が司会する場の大きな違いは「心理的安全性」の高さです。何を言っても否定されず、気を使わなくていい安心安全な場でなければ、意見は自由に出せません。意見を自由に出せなければ、イノベーションにつながる斬新なアイディアは生まれません。ファシリテーターは、どんな意見も否定せずに歓迎しますし、慣れた人であれば、アイディアの発展や相乗効果を様々な質問やフレームを使って促すこともできます。VUCAと呼ばれ変化の早い今日では、どこでも新しいアイディアが求められています。それを実現できるのが、ファシリテーション導入の魅力です。
メリット④:参加者の良好な人間関係の構築
ファシリテーターは意見の内容だけではなく、参加者の人間関係に注意を払います。上位の人に対して下位の人が遠慮していると思ったら、下位の人に話を振ってバランスを取ります。また、参加者同士の意見がぶつかり対立した場合も、間に入ってお互いの主張のポイントを整理し、両方を満たすアイディアを探ります。そのようにして、「お互いに聴く」ことを促し、協力的な人間関係を会議の中で築きます。ファシリテーターが機能する会議は単に意見をまとめるだけではなく、グループをチームとしてまとめる効果もあります。
メリット⑤:“自律協働型組織”への人材育成と組織文化継承
ファシリテーションを導入することは、人材育成と組織づくりにも役立ちます。ファシリテーターの働きをきっかけに「自ら考え、みんなで動く」人材が増え、そうした文化が定着していくからです。会社を持続的に発展させるには、良質な思考と、それを可能にする組織文化を育み、次に繋げなければなりません。もしもファシリテーションを導入せず会議や教育を管理職任せにしていたら、社員の成長は管理職の能力に依存してしまう恐れがあります。ファシリテーターがいることで、仕事のキャリアが浅い若手も含め、一人一人の力が引き出され、成長の機会が与えられるのです。
ファシリテーションを学ぶ
ここからは、ファシリテーションを学び、身につけていくことについて解説します。
ファシリテーションを学ぶには
知識を得るだけではなく、ファシリテーションが実際に「できるようになる」には、専門的な学校に通うか、セミナー・研修に参加することが有効な手段です。
ファシリテーションは「コミュニケーションの総合技術」とも言え、少し調べただけで簡単に習得できるスキルではありません。
一朝一夕では身につかないので、ファシリテーションの経験が豊富な専門家や講師に教えてもらうのが習得の近道です。直接講師に教われば、不明点や疑問点をすぐに聞けて解決できます。
「どこで学ぶか?誰に学ぶか?」ということもとても重要です。ファシリテーションのテクニックだけではなく、ファシリテーターとしての視点や心構え等深い理解を得られる講師から学べば、基本が揺るがず、どんな場面でも応用して対処していくことができます。
また、自分の住所の近くの講師であれば、繰り返し参加して、新たな疑問を尋ね、学びを深めていくことがやりやすくなります。
独学でファシリテーションスキルを習得できないわけではありませんが、研修に参加すれば最短距離で効率的に能力を向上させられます。
ファシリテーション研修では何が学べるの?
当MiNO1ファシリテーションオフィスでは、ファシリテーションについて体系的・実践的に学べる研修やセミナーを定期的に開催しています。
その研修・セミナーでは、本ページで紹介したコツやスキルを更に詳しく、様々なワークを通して体験的に学ぶことができます。
まず学べるのが、会議やミーティングの場の作り方に関するスキルです。
会議前にどんな準備をすれば良いのか、どんな会場を選ぶべきなのかスキルを習得できます。
また、会議をスムーズに進めるために必要不可欠なコミュニケーションスキルもファシリテーション研修で学べるスキルの1つです。
参加者の本音が聞き出せる話の聞き方や質問の仕方など、会議で役立つコミュニケーションスキルを数多く学べます。
さらに会議が違う方向性に向かってしまった時に軌道修正するためのスキル、
参加者同士で意見が激しく対立してしまった時の対立解消スキル、
最終的な結論をわかりやすくまとめるスキルなども学べます。
ファシリテーション研修のカリキュラム
当オフィスの標準的な1日研修カリキュラムは以下の通りです。
ファシリテーション研修カリキュラム
⒈ そもそも会議とは?
・会議の本来の意義
・会議にふさわしい事、ふさわしくない事
・あるべき会議の姿(議題の選び方、参加者の人選、時間と場所等)
⒉ ファシリテーションとは?
・ファシリテーターの役割
・司会や議長との違い
・ファシリテーターに求められるマインドセット
・基本の7つのタスク
・問題解決の流れ
⒊ ファシリテーターのスキル
・基本の7つのスキル
・会議前に準備しておくべきこと
・場をつくるスキル
・必須の質問スキル
・意見を引き出すコツ
・意見をまとめるコツ
・合意形成のポイント
・困った時の介入のスキル
⒋ ファシリテーション実践演習
・コンセンサスゲーム
・リアルテーマでの会議ファシリテーション演習
・ふりかえりディスカッションを通した学びの落とし込み
・フィッシュボウル形式*での演習(人数によって実施)
※フィッシュボウル形式…参加者を実施グループと観察グループに分け、実践と観察を交互
に行う演習方式。「自分ならこういう時どうするか?」と俯瞰的に考えることで、実践だ
けでは気づきにくい点に気づけたり、実践体験をふりかえりやすいメリットがある。
ウェブサイトや本等の媒体から知識を習得するだけではなく、ファシリテーションについて総合的・体験的に学べるのが、ファシリテーション研修の魅力です。
ファシリテーターの教育・育成
ここからは、ファシリテーターを育てるための教育や育成について解説します。
ファシリテーターを教育・育成するには
組織の中でファシリテーターを教育・育成する上で非常に重要なのは、やはり「場数」。
模擬会議および実際の会議を1回でも多く経験させることです。
学んだことを実際の会議などで活かせなければ意味がないので、集団活動を促進させる場を1回でも多く経験させることで成長を促すのが効果的です。
会議ごとにどのような展開になるのかはそれぞれ異なるため、ファシリテーターが腕を磨くなら実際の会議などの集団活動を促進させる場を頻繁に経験させるのがベストです。
とにかく経験を積ませたい場合は、模擬会議を繰り返すのがおすすめです。
模擬会議の場合、それぞれの参加者には役割を与えます。
たとえば「とにかく発言の多い人」や「反対意見が多い人」などです。
それらの参加者がいる中でどのように会議を進めるか、実践の中で能力を養っていきます。
ファシリテーションの研修を受けたのち、会議の経験も積めば、ファシリテーターとして成長しやすいです。
結果につなげるファシリテーターになるには
結果につなげる優秀なファシリテーターはさまざまなスキルが備わっているので、それらのスキルを総合的に伸ばしていかないといけません。
どれか1つのスキルだけ突出していても結果につなげるファシリテーターにはなれないので、バランス良くスキルを鍛えていく必要があります。
たとえば計画を立てて先を見通すスキル、参加者の意見をよく聞く傾聴のスキル、参加者の本音を引き出す質問のスキルなどです。どのスキルも結果につなげるファシリテーターにとって欠かせないスキルなので、普段から意識して鍛えていかないといけません。
会議で急にやれと言われてもできないため、日常生活の中で意識して鍛えることが大切です。
また、他にも合理的に考えたり、物事を深く考えたりなど思考力、論理的に物事を組み立てる論理力を養うことも、結果につなげるファシリテーターになるための条件です。
バランス良く成長するためには、コンスタントに自己分析して欠点を補う必要があります。
それを繰り返すことが、結果につなげるファシリテーターになるための重要なポイントです。
自社会議を派遣ファシリテーターに頼っていいのか?
どの派遣会社に依頼するか次第ですが、派遣ファシリテーターなら会議を上手くまとめてくれます。特に実績に優れた派遣会社のファシリテーターなら、希望した通りの結果に導いてくれることを十分期待できます。ですので、派遣会社の実績などをよく調べた上で、重要な会議を派遣ファシリテーターに頼るのは決して間違いではありません。
ただ、派遣ファシリテーターを頼れば、派遣されたファシリテーターの人数と時間に応じて然るべき費用が発生します。会議の度に毎回費用が発生していてはコストもかさみます。会社の将来を考えれば、派遣ファシリテーターを頼りつつ自社でファシリテーターを育成することも検討しなければいけません。会社で優秀なファシリテーターの育成に成功すれば、派遣ファシリテーターを頼らずとも会議が理想的な結果になります。
優秀なファシリテーターの育成は簡単ではありませんが、育成しておけば将来的なメリットが大きいのは間違いありません。初めは派遣ファシリテーターを頼って構いませんが、自社で育成することも視野に入れましょう。
ファシリテーションの本・教科書
ここからは、ファシリテーションのノウハウを伝える書籍をご紹介します。
今や、たくさんの本が出版されていますので、ご自分で検索すれば、気に入ったものが見つかるかと思いますが、ここでは、私が実際に読んでよかったと思うものの一部をお伝えします。
入門編〜初めての方向けの本
まずは、初めての方がファシリテーションの基本の考え方やコツを理解するのに適していると思われる本です。
『ファシリテーション入門』(堀 公俊 著)
NPO法人日本ファシリテーション協会創設者(現在も同協会フェロー)であり、日本のファシリテーションの第一人者とも言える組織コンサルタント、堀公俊さんの著書。ファシリテーションのスキルを、「場のデザイン」「対人関係」「議論の構造化」「合意形成」という同協会が提唱している4つの基本スキルのフレームに沿って解説しています。文庫本ということもあり、手軽に読める、入門には打ってつけの一冊です。
『ファシリテーターの道具箱』(森 時彦 著)
同じく日本ファシリテーション協会フェローで、ビジネス領域におけるファシリテーターの草分け的存在である森時彦さんの著書。「アイスブレイク」や「考えやすくする手法」「意見を整理するフレーム」等、すぐに使える「道具」が、図解とイラストでわかりやすく紹介されています。今度の会議はどんな手法で…?と悩んだとき、あると便利な一冊です。
『会議が絶対うまくいく法』(マイケル・ドイル他 著)
アメリカで「会議のバイブル」と呼ばれるロングセラーの名著。初めて読んだ時、なるほど〜とたくさんうなづき、付箋をあちこちに貼ったぐらい勉強になった本です。会議の進め方に関することが網羅的にまとめられ、しかも、砕けた口調で書かれているので読みやすいです。著者はアメリカのコンサルタントなので、文化的な違い(意見を出すのが当然で、率直に交わされる文化)はありますし、第1刷が2003年といささか古いのですが、今なお基礎を理解するにはとても有用な本だと思います。
中級編〜経験はあって上達したい人向けの本
『世界で一番やさしい会議の教科書(実践編)』(榊巻亮 著)
「やさしい」とタイトルにはありますが、実行が簡単という意味ではありません。それぐらい、企業の会議の現場に即して詳しく、網羅的に書かれています。著者は、組織変革のコンサルティングでファシリテーション業界では有名なケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。さすが内容は充実しています。「そのセリフは外部コンサルタントだから言えるのでは(社員ではいいづらい)」という部分もありますが、とにかく実践的です。最初に出た漫画版もいいですが、こちらの方が情報が多い点でオススメです。
『ゼロから学べる!ファシリテーション超技術』(園部浩司 著)
書体やレイアウトも含め、読みやすさ、とっつきやすさではこちらがオススメです。著者は会社員時代に多くの会議の進行を経験し、試行錯誤の末にセオリーを確立し、現在はプロとして独立されています。紹介されているコツは実践的で具体的で、初心者にも適しています。ただ、これを中級編にしたのは、手法のメインが「KJ法」だからです。実はきちんと扱うには慣れが必要ですし、通常の少人数の会議では必ずしも必要ではないと思います。大人数の会議でKJ法を使ってみたいという方には最適です。
上級編〜プロを目指したい人向けの本
『ファシリテーター完全教本』(ロジャー・シュワーツ 著)
「最強のプロが教える理論・技術・実践のすべて」と副題にあるように、単純なスキルよりも、プロのファシリテーターが会議中、頭の中で何を考えているのか(考えるべきか)がわかる一冊です。ファシリテーター自身の感情をどうコントロールするか、という深いテーマにも触れています。コンサルタント等として組織に介入していきたい方など向けです。
『問いのデザイン』(安斎勇樹・塩瀬隆之 著)
ファシリテーションのメインスキルとも言える「問い」の立て方について、とても深く、多角的に考察した本です。例えば、企業の商品開発や新規事業を話し合う場で、どんな問いを立てれば、本当にほしいアイディアが生まれるか。問いの立て方次第で、ありきたりな答えや漠然とした答えが返ってくるか、新しい答えや効果的で具体的な答えが返ってくるかが決まります。詳しく、やや学術的なので読みやすいとは言えないですが、「どんな問いかけをしたらいいのか」を学びたい方にはオススメです。